大判例

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広島高等裁判所岡山支部 昭和30年(う)266号 判決

所論の要旨は原判示第三の一万円は八百長レースをするため賄賂として交付されたものではなくして単純な貸借であるというのである。

然しながら原判決挙示の証拠を検討すると、所論の一万円は所論のような貸借ではなくして、被告人と原審相被告人片山秀雄と共謀して競輪選手藤本晃をして西宮競輪に於て八百長レースをさせることの報酬の内金として原判示のように交付されたものであることは明かである。

もつとも被告人が右片山と共謀して藤本晃に金一万円を交付した後に於て藤本晃は西宮競輪に出場すること取消されてはおるが、同人が出場資格のあつた当時に於て八百長レースをさせるための報酬として提供したものであるから、いわゆる賄賂たるの本質に変るところはない。

又藤本晃は右西宮競輪への出場を取消されたことを知りながら右金一万円を受領したというのであるが、同人が右の金を受領した当時に於て出場資格を取消されたことを知つていたと認むべき証拠はもとより、右金員受領前に同人の出場資格が取消し処分になつていたと認むべき証拠も存在しないから所論は当らない。従つて原判決には所論のような違法はない。所論は結局原判決の採用しなかつた証拠を挙げて原審の認定を攻撃するに外ならないから採用し難い。

前同論旨中自首減刑すべきであるとの主張について

なるほど被告人は本件の犯行がいまだ何人にも発覚されていない時に玉野市警察署に出頭して原判示の様に原審相被告人片山秀雄と図り藤本晃選手に八百長レースをさせるための報酬として金一万円を提供した経緯について申告しておることは之を認めるに十分である。(被告人の第一、二回警察官調書記録七〇六丁乃至七一一丁)

然しながらそれは被告人が右片山秀雄に欺かれたものであるとして、同人を詐欺犯人として訴追を求めたものである。その結果被告人の行為自体が本件の犯罪を構成するものとして被告人自身も亦訴追を受けるに至つたものであることは明かであるけれども、被告人の申告は右のように片山秀雄の犯罪について申告し、同人の訴追を求めたものであつて、被告人自身の犯罪について申告し、被告人自身の訴追を求めたものではない。刑法にいわゆる自首とは、いまだ捜査機関に発覚されない前自己の犯罪について申告し、自己の訴追を求める場合をいい、他人の犯罪について申告し、他人の訴追を求める場合に於てはたとえその結果に於て自己が訴追を受くるに至つたとしても自首には当らないものと解せられるから、被告人の場合に於ては自首したものとは認めることは出来ないから所論は採用し難い。

(裁判長判事 宮本誉志男 判事 浅野猛人 判事 菅納新太郎)

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